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支援のアイデア

「助言を受け入れにくい子」への対応③

困りごとが起きたとき、アドバイスを聞き入れにくいように見える子がいます。耳を貸さない姿は一見同じように見えても、特性や背景はさまざま。この連載では園での実例を取り上げ、支援の方法を考えます。

友だちの嫌がることをくり返し、やめないCさん

自分がやりたいと思ったら、相手が嫌がっても、「やめて」と言われてもくり返してしまう5歳のCさん。誰もあそんでくれないと怒り出してしまいます。

相手の気持ちがピンときにくい

相手に「やめて」と言われてもしつこく関わろうとする場面で、「あなたがこれをされたらどんな気持ち?」と、相手の気持ちを想像するように促すことばかけをすることがあります。しかし、他人の気持ちを察するのが苦手な子は、何を言われているかあまりピンときません。たとえその場で「ごめんなさい」と言えても、同じことをくり返してトラブルになりがちです。
このような子には、わかりやすいルールを決めて、具体的な行動を示していくとよいでしょう。
園での支援実例
「やめて」と2回言われたら行動をストップする決まりに
友だちの気持ちを想像して理解することが難しいCさん。そこで、同じ友だちから「やめて」「嫌だ」を2回言われたら、違うあそびをするなどと、ルールを数値化。ルールはいつでも思い出せるよう、絵に描いて見やすい場所に貼るようにしました。
本人の感情をことばにする
Cさんがニコニコして楽しそうなときには「〇〇ができて楽しいね」「△△でうれしいね」、不機嫌そうなときには「〇〇できなくて悔しかったんだね」「△△を我慢したんだよね」などと感情をことばにして代弁するようにしています。ことばかけのほか、絵本や紙芝居などを使って、感情を説明するようにもしています。

繊細で、思い通りにならないと泣き出してしまうDさん

勝負のあるあそびで勝てなかったり、苦手な活動で思い通りにならないと泣き出してしまう5歳のDさん。「もう一回やろう」と言っても聞き入れません。

生活全般の見直しでストレスを軽減する

勝ち負けにこだわるタイプの子どもは、自分の思い通りにならないと気持ちが折れてしまうことがあります。負けをいつまでも引きずり、気持ちが切り替えられないので、「もう一回できるよ」「次、がんばろう」というアドバイスにもなかなか耳を貸せません。
また、感覚過敏があって感情のコントロールが難しい場合も。生活全般を見直してストレスの軽減をはかり、大きな感情の崩れを防いだり、気持ちの切り替えができる回数を増やしていけるよう関わりましょう。
園での支援実例
苦手な活動はスモールステップで
苦手な感覚の多くある活動は耐えるのではなく、まずは離れて、当人とできそうな参加方法について話をします。音楽や歌は聴覚が過敏で苦手なので、保育室の外から参加したり、イヤーマフを使ったりして、本人がこれならできるという形で活動に参加。勝負のあるあそびでは、場合によっては応援団役を選べるようにするなど、いろいろな参加方法を提案しています。
活動の始まりと終わりをわかりやすく
見通しがもてないと不安が強くなるDさん。これからやることと、その手順がはっきりわかる視覚支援ツールで、見通しを示してから活動を始めるようにしています。苦手な歯磨きでは、磨く手順をイラストにして示すことで、スムーズに取り組めるように。「これから始める」「これをやったらおしまい」と活動の始点と終点を理解すると、不安が軽減されます。
公認心理師、臨床発達心理士 白馬智美
イラスト/ナカムラチヒロ
取材・文/こんぺいとぷらねっと
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PriPriパレット 2025年2・3月号

PriPriパレット 2025年2・3月号

26,28,32ページに掲載

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