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支援のアイデア

「助言を受け入れにくい子」への対応②


感情の発達は、社会性の発達と連動する

感情が発達してくると、自分を他者と異なる存在として客観的に意識できるように。複雑な感情が芽生え、他者の気持ちを想像したり、ルールを守ったりなど、少しずつ社会性が身についていきます。しかし、感情の発達や社会性の発達がゆっくりな子どもは、周囲からの助言を受け入れないように見えることがあります。
このようなとき、保育者はことばで理解を促そうと思うかもしれません。しかし、一時的には収まっても、身についていない社会性についてアドバイスされても理解しきれないので、すぐに同じことがくり返されてしまいます。
「助言や注意を受け入れられない」のは保育者から見た姿であり、子どもにとっては、「どうしてよいかわからない」「助言通りに動くことに意欲がもてない」という状況です。保育者は、子どもの感情と社会性の発達をふまえて、伝え方や環境を工夫しましょう。
助言が受け入れられない子の背景
・理解力の課題から、
・意図が伝わっていない
・気が散りやすく、
・聞くことが苦手
・相手の気持ちにピンときにくい
受け入れの幅が狭い

友だちや保育者に注意されても聞き入れられないAさん

あそびの順番が守れず、横入りをして友だちに注意される3歳のAさん。着替えのときも裸でウロウロ歩き回り、保育者が「恥ずかしいから着ようね」と言っても聞き入れません。

やるべきことを具体的に伝える

順番を巡ってトラブルになると、大人は「並んで待とうね」とルールを教えたくなります。着替えられない姿があると、「ちゃんと着替えてからあそぶよ」と流れを理解させようとすることも。しかし、ルールの必要性や、裸は恥ずかしいという伝え方ではうまく伝わらない場合があります。
このようなときは、どうしたらよいか、具体的な行動を伝えるほうが効果的です。「〇〇しよう」と肯定的に伝え、望ましい行動を実際に経験するなかで、その場にふさわしい振る舞い方を身につけていけるでしょう。
園での支援実例
視覚的な手がかりで“待つ”を経験する
視覚的なヒントを手がかりにして待てるように環境を整えました。床に足形を貼って待つ場所を設けたり、子どものマークで示した順番表で自分の番を視覚化したりすることで、並んで待てるようになりました。
友だちの“待つ・並ぶ”をモデルに
視覚的な情報を理解しやすい子にとって、友だちが並んで待っている様子はよいモデルとなります。トイレや手洗いの順番待ちや、滑り台やブランコなどのあそびの場面で、友だちが「並んで待つ」様子を保育者が一緒に見て、「並んでいるね」「順番だね」とことばにしながら経験するうちに、並んで待てるようになってきました。

キョロキョロして落ち着かず話を聞けないBさん

いつも落ち着きがなく、部屋中を走り回る4歳のBさん。思い通りにいかないとかんしゃくを起こし、近くにいる友だちを叩くことも。そのつどことばをかけますが、何度も同じことをくり返します。

刺激の整理と見てわかる工夫を

落ち着きがなく、常にじっと座っていられないタイプの子どもは、自分の「やりたい」気持ちを優先させて、衝動的に動いてしまう傾向があります。集中力が続かず、大人の注意や説明をじっくり聞くことも苦手です。そのため、叱られる場面が多くなりがちで、自己肯定感が育ちにくい可能性も。
まずは、やることに注目できるように、刺激の整理が必要です。見てわかる工夫でわかりやすく提示し、モチベーションに配慮しながら、ほめられる経験を積んでいけるとよいでしょう。
園での支援実例
説明の時間はショートカットする
じっとしていることが苦手なBさんは、席に座って長く話を聞くことがストレスになっていました。説明を聞いている間に集中力が削がれ、やる気が失われることも。そこで、ほかの子どものタイミングとあえてわけて、活動が始まってから個別に声をかけて参加するようにしたところ、落ち着いて取り組めるようになりました。
ルールを見える化する
友だちが使っているおもちゃに興味をもつと、いきなり取り上げてトラブルになることが多かったBさん。「友だちが使っているから取らないでね」とことばで説明しても、なかなか伝わりませんでした。そこで、おもちゃを「貸して」と伝えるシーンのイラストを壁に貼り、絵を見せながら事前に約束することで、少しずつ練習しています。
公認心理師、臨床発達心理士 白馬智美
イラスト/ナカムラチヒロ
取材・文/こんぺいとぷらねっと
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掲載されているのは

PriPriパレット 2025年2・3月号

PriPriパレット 2025年2・3月号

26,28,31ページに掲載

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