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支援のアイデア

ADHDの傾向をポジティブに活かす④

\子どもの特性別/
環境設定と関わり方の工夫
ADHDの特性による困りごとは、保育環境や関わり方の工夫で軽減できます。また保育者の適切な働きかけにより、子どもの特性をポジティブに活かすことが可能です。
【注意欠如(不注意)】タイプ
うっかりが多いBちゃん
Bちゃんは、活動の終わりの時間をうっかり忘れてしまい、気持ちを切り替えられないことがよくあります。意識があちこちに向きやすく、注意力を持続させることが苦手なためです。
【関わり方】
気づけるようにする支援

注意散漫になって何かを忘れている時は、直接「~を忘れているよ」と指摘するのではなく、「あれっ!?」とだけ小さく発して時計があるほうを見るなど、意識を向けてほしい方向に、さりげなく注意を促す関わりが適切です。保育者が促す前に自分で気づけた時は、おおいにほめて自尊心を高めましょう。「自分で気づけた」と実感できる経験を積み重ねることで、少しずつ自信をもてるようになります。
【環境設定】
興味を活かしたアレンジ

忘れっぽい反面、好きな物に注意を向けることは得意です。まだ時計が読めない子どもの場合、たとえば、時計の長針に好きなキャラクターのイラストを貼り、数字の上に家のイラストを貼って、「〇〇〇(キャラクターの名前)がお家に帰ったらおしまいにしようね」と、あそび始める前に相談しておくと、うっかりを減らすことができます。本人が興味のあるイラストなどを使い、自分で時計に貼ってもらうことも、コツのひとつです。
【特性を活かす支援】
とことん打ち込める時間を

興味のない内容には集中力が続きにくい反面、興味のある内容には強い集中を示し、時間を忘れるほど没頭することも少なくありません。探求心が強く、好きなことに打ち込める力を活かして、好きなあそびを極めたり、好きな物を集めたりして、みんなの前で披露できる場を設けるなど、自信をもてるように支援しましょう。好きなあそびで友だちと協力できる環境にすると社会性が育まれ、達成感も高まるでしょう。
【多動】タイプ
落ち着きがないCくん
Cくんは、集まりの時間に長く座っていることが難しく、常に体を揺らしたり立ち歩いたりします。感情や体の動きを抑えることが苦手で、頭に浮かんだ気持ちや動作を、すぐ出してしまうためです。
【関わり方】
“静”と“動”のバランスを重視

集まりの前などに体をたっぷり動かす時間を設けると、気持ちを切り替えやすくなります。“静”と“動”の活動を交互にバランスよく取り入れましょう。話をする時は、保育者が余計な装飾のないシンプルな壁を背にして、子どもが壁に向かって聞けるようにすると、話に集中しやすくなります。声かけの際は、目と目を合わせて「手はおひざに置こうね」「3分間も座れたね」など、具体的でわかりやすいことばを選びましょう。
【環境設定】
自然とやりたくなるサポート

自然とその場に留まっていたくなるような環境設定が効果的です。たとえば、いすの下に足形を置き、「ここに足を合わせてね」と具体的に示します。すると、やってみたい気持ちが先行して、結果的に座っていられる時間が長くなります。黒色の足形にすると、床とのコントラストがはっきりし、視覚的にも意識しやすくなります。この足形は、順番を待つ場面などで、列から離れてしまうのを防ぐ時も活用できます。
【特性を活かす支援】
体を動かす楽しさに共感

かけっこや鬼ごっこなどで体をたくさん動かし、エネルギーを発散できる活動を多く取り入れます。すぐ物を触る、叩くなどの場合は、その動作を取り入れたサーキットコースなどを作ってあそべるようにしたり、リズム体操やダンスを披露できる機会をつくったりしましょう。エネルギッシュな姿を認め、体を動かす楽しさに共感することで自尊感情が育ち、ほかの活動にも意欲的に取り組めるようになります。
教えてくれた人/
東京家政大学名誉教授、かせい森のクリニック院長
宮島 祐
イラスト/市川彰子 取材・文/山口有子
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