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ポジティブなことばかけ

子どもが不適切な行動をしたとき、保育者はつい注意をしてしまうこともあるでしょう。でも、そのことばかけが原因で、その行動が増えてしまうこともあるのです。行動を分析してその行動の機能(働きや意味)を明らかにするABA(応用行動分析学)を応用し、子どもの行動が変わることばかけを考えます。
小さな成功体験を積み重ね、ほめられることで育つ自己肯定感
「ほめる」は注目しているよ!のサイン
適切な行動にはポジティブな注目(ほめる・認める)をします。適切な行動をほめることでその行動が増える。すると、ほめられるチャンスが増える。そうして、子ども自身の成功体験が増え、他者に認められることが増えることで、自己肯定感が育ちます。
さて、「ほめる」という営みをあらためて考えてみましょう。「ほめる」とは、「すごいね」「えらいね」などできたことを評価する(成果を称える)だけではありません。それもほめるの一形態ではありますが、大切なのは、ポジティブな注目、温かいまなざしを子どもに向ける営みです。
たとえば、子どもが座っているとき、その行動に注目し「座れているね」とポジティブに捉えることばかけは子どもに「あなたが座っているのを見ているよ、知っているよ」と伝えることになります。9ページから紹介するポジティブなことばかけで適切な行動を増やし自己肯定感を育てましょう。
①できていることを見つける
OK ・着替えを持ってきたね
・ズボンを脱いだね
・シャツを着ているね
・靴下をはいたね
NG ・早く着替えてね
・まだ着替えていないの
・もうみんな着替えたよ
・ちゃんとしよう
一部分でOK!できたところをほめる
私たちはつい、まだできていないところに目がいってしまいます。子どもの行動のうち、注意することは意識しなくても思いつきますね。できていることを見つける、これは意識しないとなかなかできません。
イラストのように、着替えの時間、子どもがくつ下を両方はき終わっておらず、片方だけはいているという状況で、右では、「まだ片方しかはいていない」と、はき終えていないことに着目しています。左では、片方はいたことに着目して、ことばをかけています。「くつ下を片方はいたね」とことばをかけることで、子どもは「くつ下をはけたんだ! もう片方もはこう」と思い、くつ下をはくというのが求められていることなのだと明確にわかるでしょう。
②よかった行動をことばに
OK ・おもちゃ、貸してあげたね
・じゅんばんこ、できたね
・「どうぞ」って言えたね
・手で渡したね
NG ・やさしいね
・すごい!
・◯◯ちゃん、えらいね
ほめるときは行動を具体的に伝える
適切な行動が表れたときにすぐさま「座ったね」「『いや』と言ったね」などと、見たり聞いたりした行動、そのままをことばにして伝えましょう。
なお、「やさしいね」「ちゃんとできたね」などの抽象的な形容表現だけだと、漠然として理解できなかったり、ほめられていること自体はうれしくても、どの行動がよかったのかがわからないこともあります。
特に、保育者の意図をつかみづらい子どもには、よかった行動を具体的に伝えることが大切です。
教えてくれた人/大正大学 臨床心理学部 臨床心理学科教授
井澗知美
イラスト/ハバメグミ
取材・文/こんぺいとぷらねっと
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PriPriパレット 2024年8・9月号

PriPriパレット 2024年8・9月号

8-9ページに掲載

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