My Wonder あなたの保育をサポートする

支援のアイデア

ADHDの傾向をポジティブに活かす③

ADHD 3つの主な特性
いずれかひとつの特性が目立って現れる子どももいれば、複数の特性が複合的に現れる子どももいます。子どもの姿をよく観察し、どの特性もポジティブにとらえながら、適切な対応をとりましょう。
【衝動性】
すぐに手が出る/危険を考えず行動する/
順番を守れない など

気持ちや欲求を抑えられず、すぐに行動に移す特性です。ほしい物があると友だちから奪ったり、順番を待てずに割り込みをしたり、安全を確かめずに走り出したりするため、トラブルやケガにつながるケースが多いでしょう。保育者や友だちの会話を遮る特性もあります。安全で落ち着ける環境設定や、ルールの見える化などの支援が有効です。一方で、物怖じしないため、行動力や瞬発力があり、独創的な一面もあります。
【注意欠如(不注意)】
注意散漫/興味が移りやすい/集中力が続かない など

ひとつの対象に意識を向け続けることが難しく、注意散漫で集中しづらい特性。すぐに他のことに気をとられ、物の場所を忘れたり指示を聞き漏らしたりします。興味が移りやすい反面、好奇心旺盛で発想が豊か、柔軟性があり、些細なことにも気づけます。情報量が多く刺激が強い環境では集中が途切れやすくなるため、装飾が少ない落ち着いた環境を整え、あそびや活動の区切りをわかりやすく示すなどの工夫が大切です。
【多 動】
じっと座っていられない/常に動き回る/あちこち触る など

じっとしていられず、常に体を動かす特性です。長く座っていることが苦手で、モジモジと手足を動かしたり、あちこち触ったりします。なかには、おしゃべりが止まらない特性をもつ子どももいます。運動や外あそびが好きで、周囲を楽しませたり、友だちを巻き込んであそびを広げたりすることが得意です。体を十分に動かす時間を確保し、自ら座っていたくなる工夫などで動きを制御できるように支援しましょう。
\子どもの特性別/
環境設定と関わり方の工夫
ADHDの特性による困りごとは、保育環境や関わり方の工夫で軽減できます。また保育者の適切な働きかけにより、子どもの特性をポジティブに活かすことが可能です。
【衝動性】タイプ
すぐ手が出てしまうAくん
Aくんは、おもちゃをとっさに奪ったり、列に割り込んだりします。思いどおりにならないと、大声で暴れることもあります。自分の欲求や感情の高ぶりを抑えられず、気持ちより先に体が動いてしまうためです。
【環境設定】
ひとりで落ち着ける空間

衝動的に動いてしまう子どもには、気持ちが高ぶった時にクールダウンできる場所や時間が必要です。あらかじめ子どもと相談して、部屋の隅などに「イライラした時に落ち着く場所」を設けましょう。一緒にテープを貼ってコーナーを区切り、本人が安心できる物や、クッションなどを置きます。本人が「ここは僕が落ち着くための場所」「ここに来たら大丈夫」と納得していると、興奮していても気持ちを切り替えやすくなり、行動をコントロールする力をつける助けになります。
【関わり方】
必要な場合は抑止も

子どもが興奮して暴れてしまい、本人や友だちを傷つける可能性がある時は、安全確保のために抑止も必要です。抑止する方法は、保育者が子どもの背後にまわり、脇の下から手をまわして肩を押さえます。保育者の安全確保のためにも、子どもの頭の後ろで手を組み、のけ反りを防ぎましょう。抑止の方法と実施する意図は、必ず事前に保護者に説明して、理解と承諾を得ます。子ども自身にも「一緒にいるために、この方法であなたを守るよ」と伝えておくことが鉄則です。
【特性を活かす支援】
主役になり成功体験を

物怖じせずに思い立ったらすぐ行動に移す力があり、発想力も豊かです。人見知りが少なく、人前で話すことも厭わない子どもの場合は、体を動かすあそびやリズム運動などでリーダー役を任せ、動きのアイデアを提案してもらうなどすると、活躍できます。自分で選んだり決めたりできる姿を受容して、ほめましょう。また、お遊戯などで元気いっぱいセリフを言う役や、ヒーローになりきる役では、本領を発揮して成功体験につなげられるでしょう。
COLUMN
「1行日記」で成長を実感

保育や子育てでは、子どもがつまずいている姿に悩んでしまうこともあるでしょう。そんな時に勧めたいのが「1行日記」。ノートの左ページに今日、子どもが「できなかったこと」を1行ずつ3つ、右ページに「できたこと」を1行ずつ3つ書きます。「コップを落として割ってしまった」「ご飯の前に“いただきます”を言えた」など、些細なことで構いません。読み返すと、実は少しずつできるようになっていることに気づき、成長を実感。気持ちが前向きになり、声かけやまなざしも自然と和らいでいくでしょう。
教えてくれた人/
東京家政大学名誉教授、かせい森のクリニック院長
宮島 祐
イラスト/市川彰子 取材・文/山口有子
お知らせカテゴリー
関連キーワード