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絵本『とっています』―作者・市原淳さん×デザイナー・羽島一希さんインタビュー

絵本『とっています』―作者・市原淳さん×デザイナー・羽島一希さんインタビュー

「すもうを とっています

「ちょうちょを とっています

「しゃしんを とっています

どれも同じ「とっています」なのに、どの「とっています」も意味が異なる。そんな日本語のおもしろさを発見できる絵本『とっています』が発売となりました。

今回、作者の市原淳さんと、本の装幀を担当したデザイナーの羽島一希さんに、その制作秘話を伺いました。

―Q.『とっています』は、どのようにアイデアが生まれたのですか?

市原:5年ほど前から、ぼくは、羽島さんが講師をされている絵本講座に通っているのですが、毎回、その講座でテーマに沿った絵本を作るという宿題が出されるのです。2018年の年末に出されたテーマは、〈「ながら」の絵本。「AながらB」。AとBが同価値で進行する。〉というものでした。

すもうを とっています。

すもうを とりながら

ちょうちょを とっています。

羽島:2019年最初の講座に市原さんが『とっています』の原型となるラフを見せてくれたのですが、完成度がとても高かったのをはっきりと覚えています。しかも、そのラフは〈「ながら」の絵本〉というテーマだけでなく、〈現在進行形〉と〈最初から最後まで同じ場所〉という、ほかの2つのテーマもカバーしていたんです。

市原:それからしばらくたって、編集者さんと絵本のお話しをする機会があったときに、『とっています』のラフをお見せしました。そうしたら、とても気に入ってくれて、絵本化の企画が動き出しました。

羽島:私が次に『とっています』のお話を聞いたのは、出版が決まって、デザインの依頼を受けたときでした。1年ぶりくらいに見せていただいた『とっています』は、さらに考えられて、絵本として作り込まれていましたね。特に「パシャ!」のところ。これは以前のテーマだったら、出てこないページ。この2見開きの展開は、まさに絵本的だと感動しました。

パシャッ!

―Q. 絵を描くときに、大変だったところはどこですか?

市原:絵の描きこみという意味では、色々な料理が届く場面は大変でした。最初はもっと量が少なかったのですが、編集者さんから「お皿が重なるくらい料理を入れてください」と言われて…(笑)。今年流行したUberEatsも登場しています。ぼくはこのページのデザインがすごく面白くて大好きなんです。

羽島:このページの文字をよく見ると、ちょっと絵に隠れている部分があるんです。でもこれは間違いでもなんでもなくて、お相撲さんたちがあんなにたくさん料理を食べて、「ちょっと太ったから」、文字が隠れちゃったんです。

▲文字が隠れちゃった!

こういう遊びって、作者とバイブレーションが合うタイミングがあって、そうすると悩まずスッとアイデアが出てくるんです。最初は絵を邪魔しないように配置を考えたんだけど、あ、隠していいんだって、作者の気持ちがスッと届くというか。そういう瞬間が今回もあったので、デザインを考える作業はとても楽しかったですね。

市原:実はぼく、絵本を作るようになってからずっと、「いつか、羽島さんとお仕事したい」って思っていたんです。今日、このデザインになった理由を聞けて、この絵本を一緒に作ることができて、本当に良かったって思いました。

―Q. 『とっています』を、どんなふうに楽しんでほしいですか?

市原:「とっています」というひとつの言葉にも、色々な意味があるということを、この絵本を読んで気づいてもらえたら嬉しいです。絵本に出てこない「とっています」が、みんなの身の回りにもあるかもしれません。ぜひ、ほかの「とっています」がないか探してみてください。

―市原さん、羽島さん、ありがとうございました! お友だちや家族と一緒に、言葉遊びをたくさん楽しんでくださいね♪ みなさんは、今日、何を「とっています」か? 

『とっています』 作/市原淳
2021年1月8日発売 世界文化社
定価:1,210円(税込10%)
24ページ
ISBN:978-4-418-20817-3

 

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