My Wonder あなたの保育をサポートする

支援のアイデア

「DCD」って?

極端に不器用、身のこなしがぎこちない。でも、どんなに練習してもなかなかうまくできない。もしかしたらそれは、イメージ通りに体を動かせない発達性協調運動症(DCD)かもしれません。正しい理解と対応を学びましょう。

生活に支障が出るほどの不器用さを抱えるDCD

発達性協調運動症(以下、DCD)とは、目と手、手と足など体の複数の部位を連携して同時に動かすことに著しい困難さがある発達障害の一種です。身のこなしがぎこちなく、運動が極端に苦手、衣類の着脱に時間がかかる、はさみが使えないなど日常生活に支障が出るほどの不器用さがあります。発生頻度は5~11歳の子どもの約5~6%といわれ、決して少なくありません。また、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害との合併率が高く、そちらの特性が目立つため、不器用さというDCDの特性は見過ごされがちです。心身の成長著しい幼少期や学童期の子どもが、不器用さによる劣等感などで苦しむことがないように、DCDに対する理解を深めることが大切です。

DCDの原因は協調運動をコントロールする脳の不具合

脳の複雑な情報調整で可能になる協調運動

協調運動は、手や足など別の機能を持つ部位が相互に連携する(=協調する)ことで実行される運動です。なわとびやボールあそびなどの全身運動のほか、ボタンを留めるなど指先の作業も協調運動です。視覚、聴覚、触覚、平衡感覚、位置感覚などの感覚情報は脳内で統合され、必要な運動指令に変換されます。その指令が体の各部位に伝わることで、目的に応じた動きが可能となります。DCDでは、感覚情報を統合する脳機能の不具合によって、協調運動をスムーズに行うことができません。
\実はこんなに複雑/
日常生活のなかの協調運動
ふだん何気なく行っている動作も、実は複雑な協調運動。身近な動作を例に、いかにその動作が複雑で難しいものであるか見てみましょう。
[ 入力 ]:感覚情報の入力 [ 出力 ]:運動指令の出力

コップでお茶を飲む
[ 入力 ]
目で見て机の上に置かれているコップの位置、コップまでの距離を確認する
[ 出力 ]
コップの位置まで手を伸ばす
[ 入力 ]
目で見てコップの形を確認し、重さを予測する
[ 出力 ]
コップの形に合わせて手指を動かし、コップをつかんで持ち上げ口に運ぶ
[ 入力 ]
コップの縁が口に当たる感覚を捉える
[ 出力 ]
こぼさないように手と顔を傾けながら飲む

DCDの子の場合

コップや持ち手の形に合わせて手指を動かせない
→コップをうまく持てない
口の位置を正確に認識できない
→コップをうまく口に当てられない
お茶が口に入る感覚を捉え、顔の角度を調整できない
→お茶が口からこぼれる

教えてくれた人/
青山学院大学教育人間科学部教授
小児精神科医 小児科医 古荘純一
イラスト/かわべしおん
取材・文/森 麻子
お知らせカテゴリー

この記事が詳しく
掲載されているのは

PriPriパレット 2024年10・11月号

PriPriパレット 2024年10・11月号

24,25,26,27ページに掲載

詳細はこちら

関連キーワード