LD(学習障害)かと思ったら①
発達障害のうち、園では特性が表れにくいLD(学習障害)。しかし、就学後に子どもが抱える困難を減らす手だてがあるのなら、幼児期に支援を行うのが理想です。LDとは何か、まずは、知ることから始めましょう。 | |
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早く気づくことで、就学前にできる手だても 教育現場においてLD(学習障害)は、知的な遅れのない、発達障害のひとつとして認知されています。文部科学省では、LDを「基本的に全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態」と定義しています。DSM-5には「限局性学習症(SLD)」という診断名が表記されていますが、この特集では、「learning differences(学び方が異なる)」の意味も含め、LD(学習障害)と表記します。 未就学児の場合、読み書きの学習は必須ではなく、その子の興味の範囲での習得となるため、読めない、書けないことが表面化しません。数の概念も、経験や興味で理解度が異なるため個人差が大きく、課題はさほど目立ちません。しかし、保育者に知識があれば、園生活の様々な場面で「もしかしたらLD?」と可能性に気づく機会も増えるでしょう。幼児期の経験は、就学後の学習の土台となります。早期に気づき、適切な手だてを行うことが望まれます。 |
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ディスレクシア( 読字障害 ) 文章を読むことに困難を抱える障害です。一字ずつは読めても、音をつないでことばとして捉えられなかったり、行をつないで文章として読めなかったりします。読点もなく、ひらがなだけで書かれた文章は、障害がなくても一読するだけでは意味が理解しにくいものですが、ディスレクシアだと短い文章でも困難を感じます。 |
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ディスグラフィア(書字障害) 文字を読めても、それを思い出して書くことに困難を抱える障害。たとえ書けたとしてもバランスが悪かったり、鏡文字だったりします。「醤油」のように読める漢字であっても書けないという人も多いでしょう。ディスグラフィアがあると、簡単な文字でも思い出せなかったり、正しく書けなかったりします。 |
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ディスカリキュリア(算数障害) 数の概念の理解や計算など、算数の領域に困難を抱える障害です。物の数を数えたり、量の多少を見極めたりすることや、計算をしたり、図形を認識したりすることが苦手です。障害がなくても、平行四辺形のような図形を大きな数で均等に分けることは難しく感じますが、ディスカリキュリアがあると、少ない数でも難しく、混乱します。 |
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教えてくれた人/ 明治学院大学心理学部教授 海津亜希子 イラスト/木下綾乃 取材・文/仲尾匡代 |