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支援のアイデア

「待つことが難しい子」への対応①

集団生活で、「待つ」場面はたくさんあります。そんななかで、みんなと一緒にその場で過ごせずフラフラ動いてしまうなど、「待つ」ことが苦手な子どもたちがいます。どのように支援したらよいか、園での実践をもとに考えます。

待てない姿には発達の特性が関係

園での生活やあそびの場面で、自分の順番まで待てずにほかのあそびをしようとする、列に並んでいられない、かんしゃくを起こすなどの子どもがいます。このような姿は、性格や育てられ方のせいではなく、発達の特性が関係している場合が少なくありません。
待てない理由のひとつには先をイメージしながら行動をコントロールするのが難しいことがあります。いつまで待てばいいかわからないために不安やストレスとなってかんしゃくを起こしてしまうのです感覚過敏があって特定の刺激が苦痛でその場にいられない、または、目に入ったものに誘われて衝動的に動いてしまう場合も。
子どもにとって「待つ」という行動には、いろいろな力が必要です。自分の衝動をコントロールする力と、「今すぐやりたい」気持ちを少し我慢できる力、そして、「先にはきっと楽しいことがあるからもう少し待ってみよう」と未来を期待してモチベーションにする力です。さらに、「今は待つ時間」だというルールを理解する力と、それを持続的に覚えておけるワーキングメモリーなども関係しています。

「待つ」力と関連する子どもの発達

「待つ」ための土台となる力が十分に育っていないと、待つことはできません。様々な経験を積むなかで、少しずつ待てるようになっていきます。
自己コントロール
自分の気持ちや行動をコントロールして、何かをやりたくなる気持ちを抑える調整力は、3~6歳頃にゆっくり発達します。
先を見通す力
待った後にもっと楽しいことがあるとイメージできると、待つことに意味を見出せます。未来に期待を持ち、待つことをポジティブに受け止められるようになります。
社会性
友だちや周囲の大人との関係のなかで、順番を待つ、みんなで協力するという経験を積みながら、集団のルールを理解し、待てるようになっていきます。
すぐに泣いてしまう子の背景
①「待つ」ことの意味が理解できない
②衝動性が強い
③感覚過敏が強い
④不安が強い・気持ちが不安定

「待つ力」は土台づくりから

子どもが、ストレスなく待てるように、「待つ」をイメージしやすくする工夫も必要です。待つ場所や時間のわからない抽象的な「ちょっと待ってね」だけではなく、「〇〇ちゃんの次だよ」などと具体的に伝えるなど、その子に合わせた伝え方が必要です。順番が視覚的にわかるようにボードで示す、あそびのなかで「待つ」ルールを伝えるのも方法です。
また、待てたらもっと楽しいことがあるなど、待つことのメリットをわかりやすく伝えることも必要です。楽しく待てるように待ち時間を工夫し、待てたことに対してはポジティブな声かけをして、自己肯定感が高まるように心がけましょう。

発達がゆっくりで、「待つ」ことがまだ理解できないAさん

「待つ」ことの意味がよくわからないため、横入りをして友だちに注意されたり、フラフラと列をはみ出したりする3歳のAさん。保育者に「待っていてね」と言われても、同じことをくり返してしまいます。

待ち時間を短くし、楽しく過ごせる工夫を

「待つ」ことの意味や目的をイメージしにくい子には、行為をわかりやすく具体的に伝えることが大切。たとえば、順番ボードを使って視覚的に理解を促す、音楽が終わったら活動が始まるなど生活の流れをルーティン化するなど。また、好きなことをしながら待ち時間を過ごす、好きな感触のグッズを触るなどで、待てる子もいます。
加配保育者がついている場合は順番まで園内を散歩するなど、集団活動と個別活動を組み合わせて、無理なく参加できるようにしましょう。
園での支援実例
順番ボードで、目で見て確認
「待つ」ことをまだ理解できないAさんには、視覚的な方法で順番を伝える工夫をしました。ボードを示しながら、「Aさんはくまマーク。うさぎマークの次だよ」と伝えるように。順番の示し方は、上から下、または、左から右に統一しました。
公認心理師、臨床発達心理士 白馬智美
イラスト/ナカムラチヒロ
取材・文/こんぺいとぷらねっと
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PriPriパレット 2025年6・7月号

PriPriパレット 2025年6・7月号

34,36ページに掲載

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