心理検査を保育に活かす①
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| 「WISC-V」や「田中ビネー知能検査V」といった名称を耳にしたことはありますか? 近年では、専門機関に検査を依頼した保護者から、その結果が提供されるケースも増えてきました。検査結果から得られる情報や読み解き方を知り、明日からの子どもの支援に役だてましょう。 | |
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特性や発達の状態を知り、適切な支援を探る 心理検査は、子どもの発達状態を調べ、支援の手がかりを得るために行うもの。検査結果からは、子どもの得意なことや苦手なことを読み取ることができます。日々の姿と検査結果を照らし合わせることで、その子に合った支援が見えてきます。心理検査は、「できる・できない」を明らかにするだけでなく、「どんな特性があって、どんな支援が有効か」を探るためのひとつの指標と捉えましょう。 また、心理検査は発達障害の診断が目的と誤解されがちですが、心理検査だけで診断はできません。診断は医師のみが行えるもので、問診や行動観察、発達歴など、複数の情報から総合的に判断される点も知っておきましょう。 |
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心理検査を受けるメリットは? |
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子どもだけでなく、保護者や保育者にも 心理検査の結果から、子どもの発達の特徴を数値や記述で把握できることは、子どもはもちろん、保護者や保育者にも大きなメリットになります。 保護者にとっては、それまで漠然と感じていた、わが子の発達や育てにくさに対する不安の背景が明確になり、適切な支援や子どもへの関わり方がわかるようになります。必要に応じて、福祉や医療などの支援につながることもできるでしょう。 保育者も、子どもの特性を踏まえた環境調整がしやすくなる、保護者や園内外の関係者と子どもについての共通理解が深まるなどのメリットがあります。 周囲のおとなが、「できないのは子どもの努力不足によるもの」とせず、意欲を支える関わりをするようになると、子どもは自分に合った支援を受けられ、力を発揮しやすくなります。何より、自分の苦手なことや努力に気づいてもらえることで、子どもは安心して日々を過ごせるようになります。 |
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![]() 心理検査はどんなことをするの? ことばでのやりとりや道具の扱い方などを観察 心理検査の多くは、検査者と1対1で行われます。そのため、子どもができるだけ普段と同じ状態でリラックスして課題に取り組めるように、まずは検査者との関係を築きながら丁寧に進められます。検査方法は、質問に答えたり、パズルのような道具や玩具を使ったりするなど、あそび感覚で行える内容です。 |
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![]() 心理検査はどこで受けられる? 児童精神科医や公認心理師がいる病院などの専門機関 心理検査は、発達外来などがある医療機関、児童発達支援センターや児童相談所などの公的機関のほか、大学や民間の療育施設などでも受けられます。ただし、「支援や治療の計画作成のため」「就学相談のため」など、目的に合った検査機関の選択が大切。保護者はまず、行政の子育て相談窓口やかかりつけの小児科医に相談するとよいでしょう。 |
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心理検査の種類 知能検査と発達検査は園に提供されることも 心理検査には多くの種類があり、大きく「知能検査」「発達検査」「人格検査」に分けられます。ここでは、保育現場でよく目にする検査として、「知能検査」と「発達検査」を紹介します。知能検査は知能指数(IQ)や認知能力を評価するのに対し、発達検査は発達指数(DQ)を調べることで、運動能力や社会性など、子どもの幅広い発達領域を測定します。年齢によって受けられる検査は異なるうえ、検査の方法や内容も様々。保護者から相談を受けるケースもあるので、園でも、幼児期に実施される主な心理検査とその特徴について、把握しておくとよいでしょう。 |
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教えてくれた人/ 埼玉東萌短期大学 幼児保育学科助教 熊上藤子 イラスト/かたぎりあおい 取材・文/森 麻子 |



