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支援のアイデア

ADHDの傾向をポジティブに活かす①

いつも走り回っているやんちゃな子や常にマイペースなうっかりやさん……。子どもによく見られる姿ですが、本人が困ってしまうほどに目立つ場合はADHDの特性と考えてみてもよいかもしれません。ADHDの特性をポジティブに活かしていくためにはどうすればよいか、支援のヒントを探ります。

ADHDの特性を理解し、活かす支援を

じっと座っていられない、順番を待てない、集中が途切れやすい、マイペースで忘れっぽい。程度の差はあれ、子どもによくある姿ですが、あまりに目立つ場合は集団生活での困りごとが増え、本人も周囲の子どもたちも生活がしづらくなってしまいます。このような姿は、しつけやわがままが原因ではなく、ADHD(注意欠如・多動症)の特性として現れている場合があります。ADHDは脳内の神経機能や神経伝達物質の働きに原因があると考えられており、育て方や環境などの後天的要因ではありません。ADHDの人の目に映る世界はとても色鮮やかで刺激が強く、情報量も多いといわれています。そのため興味があちこちに移りやすく、好奇心も旺盛になります。これらの特性を豊かな個性として理解し、ポジティブな発想で支援していくことが大切です。



ADHDの特性に気づかれないまま大人になり、失敗体験が重なって自尊感情が低下してしまう人も少なくありません。一方で、乳幼児期は発達の個人差が大きいため、ADHDの診断には早いと考えられています。そのため保育者には、子どもの姿を丁寧に観察し、特性を見極めて適切に対応することが求められます。保育者の関わりや環境の工夫は、ADHD傾向の子どもが安心して生活するための土台となります。あそび場所や活動時間、目に入る刺激の調整、声かけのタイミングやルールの視覚化など、日常での細やかな配慮を心がけましょう。それらはADHD傾向の子どもがよい習慣を身につけて、気持ちや行動をコントロールする力を育む助けとなるでしょう。また、特性に応じた働きかけによってほめられる経験や成功体験を積み重ねると、自己肯定感が高まり、特性をよい方向に活かすことができます。好奇心や行動力、あふれるエネルギーを抑えるのではなく、強みとして活かす視点で保育することで、のびのびと集団生活を送れるように支援していきましょう。
教えてくれた人/
東京家政大学名誉教授、かせい森のクリニック院長
宮島 祐
イラスト/市川彰子 取材・文/山口有子
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