0・1・2歳児の保育
絵本の読みがたりQ&A(後編)
実際に絵本の読みがたりを行うとき、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。よく聞かれる質問に今井先生がお答えします。
Q.読むときに気をつけることは?
A.3つのポイントに気をつけて
・一方的に読まない
保育者が子どもに「読んで聴かせる」のではなく、「どんなふうに聴いてくれるかな?」と、子どもの聴き取り方も考慮する必要があります。子どもの反応を見ながら、子どもに合わせて読んでいきましょう。全体の流れを考え、シーンによって読むテンポを速くしたり遅くしたりすることも大切です。
・声色を変えすぎない
たとえば、おおかみが出てきた場合、おおかみになりきって驚かすような声を出したり、身振り手振りをつけたりすると、絵本の読みがたりではなく、劇になります。そうすると、子どもたちは、絵から離れて保育者の顔を見るようになってしまいます。絵本の読みがたりで大切なのは、絵を見て想像力を膨らませること。保育者がイメージを操作しないように気をつけましょう。
・適度に「間(ま)」をとる
「間」とは、語り手が今語ったことを、聴いている側が頭のスクリーンに絵を描いて(イメージして)いる時間であり、また、次の展開を予測する時間でもあります。子どもたちの想像をかきたてる大切な時間なので、どんどん読み進めるのではなく、適度に間をとることが大切です。ただし、とりすぎると、間のびするので注意しましょう。
Q.読み終わった後はどうすればよい?
A.子どもの心に残るような対応を
・絵本の内容について聞かない
「おもしろかったね」「楽しかった?」と聞くくらいはよいのですが、絵本の内容について、理解できたかどうかの質問は必要ありません。子ども一人ひとりの余韻を大切にしましょう。
・絵本を手に取れるようにする
読んだ絵本は、いつでも子どもたちが手に取れるよう、子どもの手が届く場所に置いておきましょう。「ここに置いておくね」とひと声かけておくとよいでしょう。
・同じ絵本を何度も読む
おとなは、一度読んだ絵本よりも、違う絵本を読んだほうがよいのでは?と思いがちですが、子どもは同じ絵本を何回もくり返して読むことで、絵本の楽しさをじっくり味わえるようになります。そのため、子どもが一度読んだ絵本を持ってきたときはもちろん、保育者も積極的に同じ絵本を何度でも読みましょう。
監修/今井和子先生
二十数年間、世田谷と川崎の公立保育園で保育士として勤務。その後お茶の水女子大学などの非常勤講師、東京成徳大学、立教女学院短期大学教授を経て、現在「子どもとことば研究会」代表。全国の保育者研修で講演などを行っている。
撮影/久保田彩子(本社写真部) 写真協力/浪花認定こども園(福井県越前市) 取材・文/吉野 玲