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支援のアイデア

「危険な行為をしてしまう子への対応」③

高いところから飛び降りる、急に飛び出すなど、危険な行為をしてしまう子どもがいます。その度に、保育者が対応に追われるケースもあるでしょう。どうしたら落ち着いて安全に行動できるのか、園での事例をもとに支援の方法を考えます。

危険がわからず、友だちを押してしまうCさん

友だちの反応が楽しくて、悪気なく友だちをたたいたり、押したりをくり返す3歳のCさん。
保育室の動線を見直し、環境を整備する
まず、保育室の動線を見直し、危険な場所にはパーテーションなどを置く、どうしても触ってほしくない場所に×マークを貼るなどして、物理的・視覚的環境整備を行います。
コミュニケーションのバリエーションが少ないために、友だちと適切なやり取りが難しい場合は、保育者が友だちへの関わりをやって見せ、促しましょう。保育者との一対一のやり取りを楽しめるようになると、結果として危険な行為は少なくなっていきます。
園での支援実例

1対1で触れあいあそび
悪気なく友だちを押したりたたいたりしていたため、まずは保育者が1対1で関わって触れあい、あそぶ時間をつくりました。保育者との心地よいコミュニケーションを体験することで、Cさんのほうからあそびに誘ったり、援助要求が見られたりと、人との関わりのバリエーションが増えてきました。
×(バツ)マークをつける
保育中に立ち歩いて水道の水であそび出すことがよくあったので、カバーをして×マークをつけたところ、触らなくなりました。ただし、保育室内に×マークが多くならないように最小限の使用にとどめ、できるだけ肯定的に伝えるようにしています。

大人の気をひこうと物を投げたり、不適切な行動をするDさん

物を投げたり、食べ物をこぼしてみせたりする5歳のDさん。大人の注意をひこうとして、わざと危険な行動を取っているようにも見えます。
よくない行動は過剰に反応せず適切な行動をほめる
大人がしてほしくない行為をわざとくり返し、反応を確かめようとする子がいます。このような場合、感情的な声かけは、危険な行為がエスカレートする可能性も。
危険な行為自体はすぐに止める必要がありますが、そうでなければ過剰な反応をせず、「よくない行動を指摘して正しい行動をアドバイスする→できたらしっかりほめる」の流れで対応を。日ごろから「あなたを大切に思っている」と伝え続け、安心感と自己肯定感を育む関わりが大切です。
園での支援実例
正しい行動とセットにして伝える
Dさんは、おもちゃを投げたり友だちをたたいたりすることがありました。保育者は、できるだけ冷静にその行動を注意し、「~したかったんだよね。じゃあ、先生と~しようか」と気持ちを受け止めつつ次の行動を促すようにしました。淡々と声をかけることで、以前に比べて保育者のことばに耳を傾ける姿が増えてきました。
できていることをしっかりほめる
Dさんはいつもどこか不安そうで、自分を見てほしいという思いがあるようでした。そこで、「先生はいつも見ているよ」のメッセージを常に伝えるように徹底しました。また、小さなことでもしっかりほめ、Dさんが安心感をもち、大切にされていると実感できるようにポジティブフィードバックを重視。不適切な行動は少しずつですが減ってきています。
公認心理師、臨床発達心理士 白馬智美
イラスト/ナカムラチヒロ
取材・文/こんぺいとぷらねっと
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PriPriパレット 2025年8・9月号

PriPriパレット 2025年8・9月号

36,38,40ページに掲載

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