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支援のアイデア

心理検査を保育に活かす②

保育のなかで
検査結果を活かす5つのポイント
心理検査の結果を受け取っても、ただ数字を見ているだけでは、意味がありません。検査結果を保育に活かすために必要な、5つのポイントを紹介します。
POINT 1
検査結果は“ものさし”ではなく“レンズ”
検査結果の数値や記述内容は、子どもを一面的に評価するものではなく、その子らしさを見つけるための“レンズ”のひとつです。検査結果を通じて困りごとを理解することで、支援の方向が見えてきます。かんしゃくや離席などの行動は、不安やつまずきの表れかもしれません。検査結果から、行動の背景にある特性(言語理解の弱さや発達の凸凹など)に気づけると、保育の関わり方に少し余裕が生まれます。

POINT 2
“強み”を手がかりに環境を整える
「図形や構造の理解が得意だからブロックあそびにこだわるのかも」、「作業スピードが速いからすぐに作業を終えて離席するのかも」──こうした“強み”に目を向けると、子どもの見え方が変わってきます。苦手を無理に直そうとするのではなく、強みを活かせる環境の工夫が大切です。小さな成功体験の積み重ねが、自分に合ったやり方を見つける糸口となり、自己肯定感や主体性の育ちにつながります。

POINT 3
保護者との連携を“子育て支援”として位置づける
検査結果は、保護者から園に提供されて初めて、保育に活かせる情報となります。結果の内容や保護者の受け止めを丁寧に聞き取り、園での姿とすり合わせることで、具体的な支援の工夫が見えてきます。園と家庭が一緒に理解を深めていくことが、就学や地域支援につながる道筋を描く大切な一歩になります。
事例で解説
検査報告書の読み解き方
心理検査後に検査機関から渡される「検査報告書」には、検査結果の数値だけでなく、日常生活のなかで必要な配慮や支援についても記載されています。報告書の事例を基に、その読み解き方を解説します。
視点 1
「言語理解」は平均であるため指示・説明された内容は理解できますが、「処理速度」「ワーキングメモリー」が低いので、作業の実行面で困難さがあると予想できます。かんしゃくや離席も、能力の偏りから生じる「困っている」サインと捉えて支援していくことが大切です。
視点 2
「処理速度」「ワーキングメモリー」の弱さから、一度に多くの情報を聞き取って処理することに負担を感じやすく、情報をうまく整理できていないのかもしれません。そのため、指示は「一度にひとつずつ簡潔に」「本人が確認できる形で」伝えるなどの配慮が必要です。また、事前に活動の見通しを伝えておくと、活動が切り替えやすくなると期待されます。
視点 3
「数字や文字が読める」という本人の得意な部分に着目し、そこを活かした支援を考えましょう。例えば、作業中にすべきことを思い出せるように、「①きがえ、②といれ」などと文字にして、手順を「見える化」する方法もあります。
教えてくれた人/
埼玉東萌短期大学 幼児保育学科助教
熊上藤子
イラスト/かたぎりあおい 取材・文/森 麻子
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