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保護者に信頼される対応とは?③

発達に特性がある子の保護者は、わが子の育ちに戸惑い、悩むことが多々あります。どんな思いで保護者は子どもと向き合い、何を感じているのか。保護者の思いへの理解を深めるヒントと対応のキホンを紹介します。
保護者心理を知るヒント 葛藤しながら受容に向かう道のりとは
保護者がわが子の発達障害を受け入れるには8つの段階があり、複雑な思いを抱きながら受容していきます。その時々の保護者の心理状態や対応のポイントについて紹介します。
行ったり来たりして少しずつ受け入れる
保護者の思いを知るには、保育者は「自分がこの保護者の立場だったら……」と考えてみると理解が深まりやすいでしょう。発達障害は、苦手なことでも対応によって困難さが軽減するなど、子ども自身の様子にも変化があるため、保護者は悩んだり、疑念を打ち消したりしながら、それぞれの段階を行ったり来たりして、少しずつ受け入れていきます。
1.精神的打撃
わが子の様子から、発達障害を疑ったとき、保護者は落ち込みます。医療機関で診断が出ると、精神的ショックで取り乱すこともあります。
2.否定・パニック
診断が出ても「たまたま診察の日は調子が悪かった」など否定する傾向があります。また、園でのトラブルなど、直面しなくてはならない出来事があるとパニックに陥ることも。
3.怒りと不等感
状況への理解が深まるにつれ、「なぜ私の子だけが!」と怒りや不等感を抱きます。送迎の際、イライラする様子が見られたりしたときは「今は受け入れるのに時間が必要な時期」と胸に留めましょう。
4.敵意と恨み
「なぜ私たちだけが!」という思いが募り、周囲に敵意を感じることも。そうしないと自分が崩れてしまうのです。保育者は、この段階だと理解し、傷付くことを言われても落ち込まないで。
5.罪悪感
周囲への敵意と恨みの感情が収まってくると、次は「落ち着きがないのは、私の育て方のせいかもしれない」など、保護者は自分自身を責めて苦しむこともしばしばあります。
6.孤独感と抑うつ感情
「誰もわかってくれない」と孤独感が高まったり、気分が落ち込みやすい時期。クラスの保護者や保育者とのかかわりを避けたり、うつ傾向になる保護者もいるので、注意深く様子を見ましょう。
7.精神的混乱と無関心
落ち込む状態が続き、「何も考えたくない」と思い、何事に対してもやる気がなくなることが。話すのを避けるなど気になる様子があり、子どものことを相談するのが難しいときは家族に相談しましょう。
8.あきらめと現実の直視
ここまで来ると、保護者は子どもの支援の必要性に少しずつ目を向け始めます。保育者にも前向きに相談することが増えてくるので、いつでも相談にのれる態勢づくりをしましょう。
9.新しい価値観の獲得
やがて保護者は子どもの発達障害を受け入れ、支援の必要性を理解します。「子どもがよりよく生きるためにはどうしたらよいか?」という新しい価値観で考えるようになります。
教えてくれた人/筑波大学名誉教授 徳田克己
イラスト/コウゼンアヤコ
取材・文/麻生珠恵
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PriPriパレット 2024年4・5月号

PriPriパレット 2024年4・5月号

53ページに掲載

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