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どう対応する?暴言・暴力・自傷行為①

「バカ」「うざい」などの好ましくないことばを言ったり、すぐに手が出てしまったりする子や、自傷行為で自分を傷つけてしまう子がいます。子どもが深く傷つくだけでなく、保育者や保護者にとっても心配なそのような行動には、発達障害の特性が影響していることも。どのような対応が必要か考えていきましょう。

自傷行為

「バカ」「うざい」「きもい」などの暴言や、たたく・蹴るなどの暴力は、相手の気持ちや体を傷つける望ましくない行為。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。4つの事例をもとに、対応のポイントを紹介します。

ささいなことですぐ怒り、「死ね!」「ぶっ殺す!」など、
乱暴なことばを言うAくん

ある日、保育室でAくんがブロックあそびをしていると、近くにやってきた子がAくんに気づかず、ぶつかってしまいました。その子は「ごめんね」と謝りましたが、Aくんは顔を真っ赤にして怒りながら「バカ! 死ね!」と怒鳴り散らしました。
Aくんってこんな子
5歳。軽度の自閉スペクトラム症(ASD)の診断あり。ほかの子とあそびのイメージを共有できず、友だちとうまくあそべないことが多い。

暴言・暴力 
理由と対応の基本
背景にある発達障害の特性を知ることから
一般的な発達の子は、ことばで気持ちを伝えられる年齢になると、相手を傷つける乱暴な言動は減っていきます。しかし、発達に特性のある子は4~5歳を過ぎても暴言や暴力が頻繁に見られることがあり、年齢不相応の言動が悪目立ちして、「困った子」と思われがちです。しかし、暴言や暴力の背景には、衝動性やことばによるコミュニケーションの苦手さなど発達障害の特性があるケースもあり、子ども自身が困っている場合も。そのような背景がある可能性もあることを念頭に、子どもに寄り添った対応を心がけましょう。
\発達の特性との関係は?/
暴言・暴力が起きやすい理由
感覚過敏によるストレス
発達に特性のある子は、感覚が過敏であることが少なくありません。例えば、わずかな物音が耳を塞ぐほどの大音響に聞こえたり、蛍光灯の明かりが、目が痛くなるほどまぶしく感じられたりすることもあります。様々な刺激に過剰に反応し、つねに強いストレスを感じているので、ささいなことで感情が爆発してしまうことも。


コミュニケーションの苦手さ

発達に特性のある子は、ことばや非言語コミュニケーションが苦手なことがあります。そのため、自分の気持ちをうまく相手に伝えられず、フラストレーションがたまりやすい傾向にあります。そのいらだちや不満が、暴言や暴力といった乱暴な行為となって表れることも。


言動を抑制できない衝動性

注意欠如・多動症(ADHD)の傾向がある子には、その特性として強い衝動性があります。友だちにいやなことを言われたりされたりしたとき、自分の思い通りにならないときなど、こみ上げた怒りの感情をコントロールできず、突発的に暴言や暴力が出てることもあります。

その場での対応 ①
感情的になって頭ごなしに叱らない
暴言や暴力が起きたとき、その場で子どもに「たたいたらだめ」などと言っても、興奮状態の子の耳には届きません。また、発達に特性のある子は「だめ」などのことばに反応しやすく、全否定されたような気持ちになってしまうことも。その場で頭ごなしに叱るのは避け、まずは静かな場所に移るなどして子どもを落ち着かせましょう。その後、なぜそのような行為をしたのか冷静に話を聞きながら、気持ちに寄り添うことが大切です。
その場での対応 ②
適切なふるまいやことばを教える
暴言や暴力は、ことばで気持ちを伝えられないことで生じるフラストレーションの表れでもあるので、気持ちを伝える適切な表現方法が身につくように子どもを導くことが大切です。保育者の話が聞ける程度に子どもが落ち着いたら、「死ね」「バカ」などのことばや暴力の代わりに、例えば、「『死ね』ではなく、『おもちゃ返して』と言おう」「たたくのではなく、『やめて』と口で言おう」など、具体的な伝え方を示しましょう。
教えてくれた人/
社会福祉士、臨床心理士 清水友康
イラスト/たかはしけいこ
撮影/五十嵐 公 久保田彩子 中島里小梨(世界文化ホールディングス)
取材・文/森 麻子
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PriPriパレット 2025年6・7月号

PriPriパレット 2025年6・7月号

4,6,8ページに掲載

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