自身にも特性がある保護者
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子どもだけではなく、保護者にも特性がある場合に、どのような対応をしたらよいかを考えます。 発達に特性がある子どもの保護者とのやりとりは、思いに寄り添った接し方が大切です。様々なケースを取り上げて、よい関係を築く対応をご紹介します。 |
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子どもの育ちを最優先に保護者に対応する 保護者のなかには、自身にも特性があると思われる場合があります。忘れ物や遅刻が多い、提出物の期限を守らない、過剰に心配する子どもの様子がうまく伝わらないなどのことにより、子どもの園生活に支障をきたす場合、対応に悩む保育者も多いのではないでしょうか。 その場合、保育者はあくまで子どもの保育に関わる範囲で保護者をサポートする姿勢が大切です。子どものために保護者もしっかり支援しなければ、と思うあまり、保護者のミスを指摘しすぎたり、生活に踏み込みすぎたりすることは避けましょう。保育者の関わりだけでは解決しないことも少なくないため、保育者は保護者と適度な距離を保ち、関係を抱え込まないことも大切です。子どもの育ちを一番に考え、子どもの園生活に支障がないよう保育でできる支援を行いながら、保護者に対応していくとよいでしょう。 |
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特性がある保護者への対応では、保護者自身が困っていることを理由することが大切。子どもの園生活を保障する範囲で保護者の特性に配慮したサポートを。 | |
対応のコツ すべての保護者にわかりやすい情報の提示方法を心がける 保護者自身の特性により園からの情報が伝わりにくく、忘れ物や遅刻が多いことがあります。まずは情報の提示方法を振り返り、「どんな保護者にも伝わりやすく」を心がけることが大切です。同時に情報を忘れがちな保護者には予定前日にひと声かける、電話をする、提出書類にはその場で記入をお願いするなど、忘れ対応するとよいでしょう。 |
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園からの情報の伝え方が悪いの? 忘れ物やお知らせ見落とし、遅刻が多い お知らせをよく見落とす保護者がいます。活動に必要なものや返事が必要な書類を忘れたり、時間や日程を間違えたりします。指摘すると「すみません」と明るく返事をするのですが、その後もくり返すので情報の伝え方が悪いのかと心配になります。 |
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こう対応! 子どもに影響がある場合は個別の対応を まずは園からのおたよりや、お知らせが保護者全員にとってわかりやすく書かれているかを見直してみましょう。また保護者に特性があり、それが理由で子どもの活動の機会が減るなど保育に影響がある場合は、保護者の様子や行動の傾向などから一人ひとりに合ったサポートを考えます。このケースの場合は、保護者が情報を忘れないように個別に電話をして確認する、予定日の数日前から必ず声かけをするなどの対応をするとよいでしょう。 |
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人との交流が負担なのかも? 会話を避けられ、子どもの様子を共有できない 話しかけてもすぐに帰ろうとし、声をかけてほしくなさそうな保護者がいます。その保護者の子どもは着席しているのが苦手なので「おうちでどんな感じですか?」と聞いても、質問の意図が伝わっていない様子で、うまく子どもの姿を共有できません。 |
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こう対応! あいまいな言い回しはせず、短く要件を伝える 今までにその保護者と関係が悪くなるような出来事がない場合は、保護者の特性からあいまいな表現を理解することが苦手で、質問の意味がわからず、会話を避けていることも考えられます。そのような保護者は「最近どうですか?」などの抽象的な質問は返答しにくい可能性があります。最も聞きたいことを最初に明確に伝え、「おうちで食事中に、食べ終わるまで座っていますか?」などとはっきりと具体的な質問をするように意識しましょう。 |
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気をつけましょう あいまいな表現を具体的に 保護者へのお願いやお知らせで、保育者としては伝わるだろうと思っていても、実はあいまいでわかりにくい表現の場合があります。誰が読んでも迷わないように具体的に示し、さらに写真やイラストを添えるなど、工夫してみましょう。 <例> ● 汚れてもよい服装 → 絵の具がついてもよい服 ● ほかの保護者の邪魔にならないように 撮影を → 白いテープの内側で、前後2列で撮影を |
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保護者と適度な距離で関係を築き、保育者の心身の健康も大切に 発達に特性がある人と、良好な人間関係が築けず、家族やパートナーなどが心身の健康を損なう状態を「カサンドラ症候群」と呼びます。保育者も、特性がある保護者にしっかり対応しなくては、と熱心になるあまり、カサンドラ症候群になる可能性があります。保護者のサポートをしながらも適度に距離を取り、ひとりで悩みや責任を抱える必要はありません。主任や園長などにも相談し、「そういう保護者もいる」と客観的に捉えられるとよいでしょう。 |
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教えてくれた人/筑波大学名誉教授 徳田克己 イラスト/コウゼンアヤコ 取材・文/小栗亜希子 |