海外にルーツのある保護者②
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| 発達に特性のある子どもの保護者とのやりとりは、思いに寄り添った接し方が大切です。様々なケースを取り上げて、よい関係を築く対応をご紹介します。 | |
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ケーススタディ
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発達障害? 言語? 原因の判断が難しい 日本語での会話も指示の理解も困難な子どもの保護者 入園から数か月経つ3歳児が、意味のある日本語を話さず、こちらの指示も理解していないようです。言語の問題なのか、発達面が原因なのかの判断が難しく、保護者が子どもの様子に気がついているかもわかりません。保護者に伝えた方がよいでしょうか。 |
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こう対応! 入園から半年が目安。保護者とも様子を共有する 一般的に、海外にルーツがある3歳以上の子の場合、園で数か月過ごすと簡単な指示は理解でき、友だちとやりとりなどもするようになります。入園から半年を過ぎても日本語を話さず理解もしていないようなら、発達に特性があることも考えられます。海外にルーツのある保護者はわが子のことばの問題を気にかけている方が多いので、子どもの様子は早めに伝え、園での様子を見てもらい、気になる場合は病院や保健センターへの相談などを勧めましょう。 |
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入園前にも説明したのに…… 子どもに乳幼児健診を受けさせていない保護者 思い通りにいかないと、すぐに大声を出したり、泣いたりして怒る子がいます。入園前にも、入園直後にも「まずは乳幼児健診を受けてほしい」と保護者に伝えており、理解してくれていると思っていましたが、受けていませんでした。 |
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こう対応! 声かけで受診を促し、子どもの様子がわかるメモを用意 自治体の通知を見逃した、自国では乳幼児健診が有料で日本でもそうだと勘違いしていた、日本語での会話が難しくて行きたくなかったなど理由は様々なので、保護者を責めるのはやめましょう。これから受診できるか自治体に確認し、今度は忘れないよう声をかけるとよいでしょう。また子どもの様子を日本語で伝えるのが難しい保護者には、保育者が子どもの姿や気になるところを書いておき、健診受診時に医師に渡して診察の参考にしてもらっても。 |
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「大丈夫、大丈夫」と言うけれど…… 支援が受けられると理解していない保護者 園での子どもの様子を伝え、家で困っていることがないか聞いても、「大丈夫」と答える保護者がいます。児童発達支援などについて伝えようとすると、どうしてよいのかわからない様子で困惑されてしまいました。ここからさらに話をした方がよいでしょうか。 |
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こう対応! 国による違いも理解しながら、受けられる支援を説明する 発達に特性のある子への公的な支援がない国にルーツがある場合、そもそも児童発達支援などのサービスが受けられる認識がない保護者もいます。日本語が苦手なため、つい「大丈夫」と返事をすることがあるので、自治体の資料を一緒に確認するなどして制度の仕組みを丁寧に説明しましょう。また、仕事が休めない保護者には送迎のある児童発達支援を紹介するなど、千差万別の事情も考慮して、状況に合った支援が受けられるように情報を伝えましょう。 |
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<知っておきたい> 複数の手段を使ってコミュニケーションを 行動の指示を絵カードで伝えたり、未経験の行動や行事などは、様子がわかる写真や動画を見せたりして、日本の子どもへの支援と同じように、保護者とも子どもともイメージを共有するとよいでしょう。自治体により、多言語に翻訳されている資料などもあるので、それを活用するとともに、お知らせは文章だけでなく実物も見せる、話す時は翻訳機やアプリも使う、通訳ができる方を介するなど複数の手段を用意してコミュニケーションをはかるとよいでしょう。 |
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<FROM 徳田先生> 急がずに、じっくりと保護者に向き合いましょう 海外にルーツがある子どもは、日常の保育のなかで案外たくましく成長していきますが、保護者が日本の文化やコミュニティに適応するのは時間がかかることもあります。保護者自身がまだ園に慣れていない時期に、保育者からわが子について「気になることがある」と伝えられても、ますます困ってしまうでしょう。子どもを思う気持ちは、海外にルーツのある保護者も日本の保護者も同じなので、保育者は急がずじっくりと保護者に向き合うことが大切です。 |
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教えてくれた人/ 筑波大学名誉教授 徳田克己 東京未来大学 こども心理学部准教授 西村実穂 イラスト/コウゼンアヤコ 取材・文/小栗亜希子 |



