あそびの中で子どもは育つ
ドキュメンテーション型の実習日誌の効果とは
保育者を目指す学生にとって、園での実習は欠かせません。その実習の際の日誌に変化が出てきています。ドキュメンテーション型の実習日誌を紹介します。
変わり始めた実習日誌
実習日誌というと、今までは文章だけの日誌が主流でした。けれど最近、写真などを活用したドキュメンテーション型の日誌が一部で取り入れられ始めています。
なぜでしょう? 園での実践をとおして、ドキュメンテーションという形式で保育や子どもの育ちを記録すると、とても見やすく、理解しやすいことがわかってきました。それなら、ドキュメンテーションを実習日誌に活用した方が、学生の学びも深まるだろうと考える園や養成校が出てきたのです。
ドキュメンテーション型の日誌とは?
ドキュメンテーション型の日誌は絵日記ではありません。写真を撮って、「こんなことをしていました」と日々の活動を羅列するだけでは意味がないのです。「実習中の活動について、自分で記録したメモや写真をもとに、振り返る。そしてどんな意味があったか、なにを感じたかなど、自分の考えを写真と文章で伝える」。そうしてこそ、学生の学びとなるのです。
また、ドキュメンテーション型の日誌は、学生自身の心が動いた部分がはっきりとわかるのも特徴です。たとえば、本誌61ページの実習日誌では、「葉っぱに穴が空いているから、虫がいる」という子どもの発見に驚いたり、「鉄棒であそぶときに注意するポイントを他の子に教える姿に感心したり」と、書き手の感動が伝わってきます。感動しているからこそ、吹き出しや絵まで使って日誌に記載しているのでしょう。これらの例のように、子どもの姿に心が動くのは、保育者の資質として大切です。心が動くから、さらに子どもにつ いて学ぼうという気持ちが生まれるのです。
また、ドキュメンテーション型の日誌は、子どもの変化やあそびの発展のプロセスを、写真と文章で具体的にわかりやすく記録できるのも特徴です。わかりやすいからこそ、あそびのプロセスの中に学びがあることに着目するようになるでしょうし、なによりもプロセスを大切にする保育者になるきっかけにもなるでしょう。
ドキュメンテーション型の日誌のもうひとつの効果
ドキュメンテーション型の日誌は、日誌作成のためだけでなく、実習生と実習担当の保育者が、同じ写真を見ながら語り合い、互いの学びを深め合うことができます。たとえば、下の日誌の考察には「普段の何気ない生活が子どもにとっては学びである」と書かれています。これは、子どもとともに過ごしただけでなく、写真を見ながら、担当保育者と一緒に振り返りながら得た結論です。わかりやすい写真で対話が豊かになったからこそ、とても大切な学びへとつなげていくことができたのです。
ドキュメンテーション型の日誌は、まだ始まったばかりですが、養成校と連携をとりながら、ぜひ取り入れていただきたいと思います。
本誌では実際の実習日誌や実習生と保育担当者がともに学び合う様子などを紹介しています。
文/田澤里喜(玉川大学教育学部准教授、東一の江幼稚園園長)
協力/東一の江幼稚園 イラスト/朝倉めぐみ