絵本『りんごごろごろ』の見どころ ―作者もぎあきこさんインタビュー
保育士としても活動されている、作者のもぎあきこさん。
もぎさんに、絵本制作の裏側や作品への思いを伺いました。
―このお話を作られたきっかけは…?
普段、保育士として絵本を読む前に、必ず「手遊び」を入れます。“これから絵本を読みますよ~。お話の世界に一緒に入りましょう”という気持ちで始めます。お決まりの手遊びを何通りかするのですが、どの園でもこの「りんご ごろごろ」は大人気でした。
▲もぎさんが勤めているプレ幼稚園「ほっこり~の」
またここ数年、手遊び歌を題材とした絵本を、園でもよく読むようになりました。あっという間に自宅の手遊び・わらべ歌の絵本は数十冊に。でも、どんなに探しても、お気に入りの「りんご ごろごろ」の絵本が見つからず……。勝手に私がお話をつくって子どもたちと手遊びを楽しむようになりました。いつしか“絵本になったらきっと多くの子どもたちが楽しんでくれるかもしれない”とも思うようになり、原案をつくることにしました。
―保育士さんとして、子どもたちとふれあう中で生まれたのですね。お話を考えるときに、工夫されたのはどんなところでしょうか?
私自身が子どもになって一緒に楽しみ、心に『すぅっ』と入ってくる言葉を選んだところでしょうか。お話をつくったあとは、実際に複数の園の子どもたちと一緒に楽しんでみます。子どもたちがビックリしたり感動したり、発見したり……と、心を揺さぶられるような瞬間を見逃さず、大事にしているつもりです。わかりづらかったりすると、子どもたちは素直にその部分に「わからなーい」という表情をします。
『りんごごろごろ』は、すべての子どもたちが心健やかに育ってほしい、という願いを込めてつくりました。手遊びを知らない読者の方にも楽しんで頂けるように、お話の流れも工夫をしました。
前半(1番の歌詞)は、赤ちゃんの寝返りから歩き出すまでの『成長』を描いています。
「りんごごろごろ りんごごろごろ」・・・寝返りをうつ赤ちゃん
「みかんかーんかん みかんかーんかん」・・・プンプンと怒っている赤ちゃん
「ピーマンピーピー ピーマンピーピー」・・・エーンエーンと泣いている赤ちゃん
そして、1歳を過ぎて歩き出す「トマト とことこ…」に続きます。
後半(2番の歌詞)は、成長してから体験するであろう様々な出来事、そして羽ばたく“未来”へと繫がります。
最後は、“たくさん遊んで、たくさん夢を見てほしい”という気持ちを込めて書きました。そして、森あさ子先生が素晴らしい切り絵の世界を描いてくださり、子どもたちに寄り添う作品になったように思います。とても感謝しています。(手遊び動画は森あさ子先生の画が動きます! 必見です。)
―子どもたちへの深い愛情がとても伝わってきます。最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
『りんごごろごろ』は、親しみのあるメロディーに、子どもたちが大好きな果物や野菜たちが登場する絵本です。手遊びは単純な「ぐー」と「ちょき」と「ぱー」が出てきます。
手の形が目まぐるしく変わると、途端に子どもたちにとって難しい手遊びとなってしまいますが、この手遊びはゆっくり、それぞれ二回ずつなのであっという間に覚えてしまいます。
また、絵本の意味が分からなくてもメロディーや動作だけでも楽しむことができます。4か月の赤ちゃんとママが楽しんでくれた時には、ママがリズムに合わせて赤ちゃんの体を優しくなでるだけで、大変喜んでくれました。
少し成長して、一緒に踊ったり歌ったりできる幼児の皆さん(私が担任を持っているプレ幼稚園では主に1~4歳)になると、歌詞の「韻(いん)」を楽しむようになりました。多くのフレーズはこの「韻」を踏んでいますので、口にするのが楽しくてたまらない! という表情をします。
ご家庭や園、おはなし会などで、子どもたちの未来へ向けての願いを思い描きながら、繰り返し楽しんで頂けたら嬉しいです。
―もぎあきこさん、ありがとうございました!『りんごごろごろ』をきっかけに、皆さんがたくさん笑顔になれますように…♪