絵本『あらいくん』見どころ―著者インタビュー 中川ひろたかさん×sericoさん
2回目となる緊急事態宣言が発令され、感染症対策として、手洗いの重要性がますます高まってきています。でも、小さな子どもたちほど、正しい手洗い方法を伝えるのは大変ですよね。そんな園やご家庭にオススメの手洗い絵本『あらいくん』が、このたび発売になりました。文は『さかながはねて』など、楽しいお話をたくさん作られている中川ひろたかさん。絵は可愛いしろくまの絵が大人気のsericoさんです。おふたりに、制作の裏側や絵本の見どころを伺いました。
―この絵本は、愉快な主人公“あらいくん”を通して、楽しく、歌いながら手洗いができるお話ですね。あらいくんのキャラクターはどのように生まれたのでしょうか?
中川:以前から、アライグマっておかしな動物だなって思っていたんです。食べ物や自分の手をあんなに水で洗う動物もいないじゃないですか。きっと、周りの動物も「変なヤツだな」って思いながら付き合っているんじゃないかって思ったんです。でも、アライグマ本人は自分が周りにどう思われているかなんて全く気にせず、洗っている。ストレートな“しつけ絵本”にはしたくなかったので、手洗いが好き過ぎて、まじめで几帳面。そんな主人公がいたらおもしろいなと思って、このお話を書きました。
―sericoさんは、お話を読まれたとき、どう思いましたか?
serico:今だからこそ子どもたちに伝えたい、意義のあるテーマだと感じました。それと、お話のところどころに登場する手洗いの音と、飄々としたあらいくんとのギャップがとても楽しいなと思いました。
―手洗いというと、一般的に、ゴシゴシ、ジャブジャブという音が思い浮かびそうですが、あらいくんの手洗いの音は「ジャブジャブ クチュクチュ ピチャパッパ」といろんな音が出てきますね。中川さんならではの表現だと感じました。
serico:わたしは「ピチャパッパ」の響きが、とくにおもしろいなと思いました。
中川:ぼくは手洗いするとき、こういう音が聞こえているんだよね。むしろ、ゴシゴシというのはあんまり聞こえないかな(笑)。
―sericoさんは、あらいくんをデザインするときに、工夫されたところはありますか?
serico:清潔感と几帳面さを絵からも感じてもらえるよう、上着は左右対称に見えるようにしました。ポケットも左右対称についていて、ここにはハンカチや、お話の後半で登場する石鹸なんかが入るようになっています。常に手洗いできる準備をしているところも、あらいくんの性格が出ているように思います。それと髪型がくるんとなっているのも、毎朝整えているから。そこも几帳面ですよね(笑)。
▲キャラクターラフ案。
―そんなあらいくんたちの前に現れるのが「バイキンけんきゅうじょ」の所長さん。なんだか中川さんに似ているような……。
中川:たしかに、最初に見たとき、「ぼくに似ているかな……?」と思いました。でも、ちゃんと所長さんになっているのが、さすがだね。
serico:制作の間、コロナ禍ということもあり、中川さんに直接お会いすることはできませんでした。でも、編集者さんから中川さんのお写真を見せていただいたんです。それはあらいくんの表紙のイメージのモデルだったのですが、それを見ながら、所長さんの風貌も固めていきました。
―こちらの写真ですね!
中川:表紙は絵本で最初に目が行く場所ですから。あらいくんが正面を向いて、手洗いしている絵がいいと思ったんです。
―絵を描くときに、難しかったところはありますか?
serico:やはり、ウイルスをどう描くかは悩みました。あまりリアルに描きすぎるのも怖がらせてしまう。なので怖がらせず、楽しい気持ちで手洗いを習慣にしてもらえるよう、絵本全体の雰囲気や色合いなどには色々こだわりました。
―そうですね。この絵本は、目に見えないウイルスの存在を伝えていますが、安堵感があると思いました。青を基調としたページ全体の色合いがとても印象的です。
中川:「どうして手洗いが大切なんだろう?」と子どもたちが考えたり、手についたウイルスやバイキンを想像したりする。そんなきっかけになってくれたら嬉しいですね。
―絵本に出てくる手洗いソングは、中川さんが作詞作曲された新曲で、カバーの袖に載っているQRコードから聴くこともできますね。
中川:そうです。曲はあっという間にできました(笑)。最初はぼくの歌声だったのですが、レコーディングすることになり、GaagaaSのまつむらしんごくんに編曲をお願いして、べっぷのどかちゃんに歌ってもらいました。まつむらくんの編曲も、のどかちゃんの歌声もすごくいいんですよ。「あらいくんの てあらいソング」にピッタリ。ぼくは、この絵本を作ってから、ずっと、手洗いするときは、この歌を歌っています。
serico:私も制作中、「あらいくんの てあらいソング」を聴いていました。できあがった動画は、可愛い歌と動きが、楽しいですね。絵本を読んでくれた子どもたちにも、この手洗いソングを歌って、手洗いしてもらえたら嬉しいです。
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中川:園でも手洗いソングを歌って手洗いしてくれたら、今年は更に、感染症予防をしっかりできるんじゃないかな。
―中川さん、sericoさん、ありがとうございました!「あらいくんの てあらいソング」はとてもリズミカルで、心地いい歌です。子どもたちがあらいくんと一緒に、歌いながら、楽しく手洗いの習慣を身につけてくれたらと思います。絵本とともに、どうぞお楽しみください。
『あらいくん』(ユーモアせいかつ絵本・てあらい)
文/中川ひろたか 絵/serico
監修/内海裕美(日本小児科医会 常任理事 吉村小児科院長)
2021年1月16日発売
定価 :本体1,200円+税
世界文化社 刊