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絵カードを使って

発達に課題のある子への視覚支援

発達に課題のある子への視覚支援

わからないことだらけのなか、つらい思いをしている子どもたち
発達に課題のある子が感じているもっとも深刻な困り感は、ことばで説明されても、何をどうしたらいいかわからない、ということでしょう。どうしてわからないのか? それは、次にあげるような発達障害のいくつかの特性が深く関係しています。

  • [1]集中力が続きにくいため、保育者の長い説明をじっと聞いていられない。
  • [2]過敏性や多動性が強く、周囲の音や友だちの動きに気が散ってしまうため、話を最後まで聞いていられない。
  • [3]想像することが苦手なため、話の内容を頭のなかでイメージすることも苦手。

 

このような特性から、発達に課題のある子は、ことばによる説明や指示を理解するのに、とても時間がかかってしまうのです。

ほかのみんなはわかっているのに、自分だけわからないという状況は、とても心細く不安で、つらいものです。そんなとき、わかるためのちょっとした手がかりになる物があれば、子どもは救われます。そしてその“ちょっとした手がかり”になるのが視覚支援です。

視覚支援とは、絵や写真、文字などの視覚情報を使って、子どもが目で見て理解し、行動できるようになることを目的とした支援です。視覚から入る情報は耳から入ってくる抽象的なことばと違い、物や事象そのものを瞬時にイメージできる情報源です。発達に課題のある子にとって、そのような視覚情報はことばよりもずっとわかりやすいのです。

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絵カードを使った視覚支援を始める前に必要なこと
視覚支援の代表例は、絵カードです。絵カードを使って、物の置き場所を示したり、欲しい物ややりたい活動を相手に伝えたりすることができます。絵カードは一枚で使うこともできますが、複数枚を組み合わせて、スケジュール表や手順表として使うこともできます。

絵カードはとても便利な支援ツールですが、いきなり絵カードを子どもに見せても、保育者が望むような効果は期待できません。なぜなら、子どもが絵カードの内容、つまりそれが何なのか、あるいは、どんな活動なのかを知っていなければ、絵カードに書いてあることの意味がわからないからです。ですから、絵カードを使う前には、経験を先行させることが必要です。

絵カードは、ある程度できるようになったことを定着させたり、忘れないようにしたりしたいとき、また、できてはいるけれど自発的にそれができるようになってほしいときなどに利用します。

まったくできていないのに、絵カードを使って教えようとすると、かえってうまくいかないことや、場合によっては、絵カードを見せるだけで拒否するようになってしまうこともあります。

お話・監修/佐藤 曉(岡山大学大学院教育学研究科 教授)
取材・構成/森 麻子 イラスト/中小路ムツヨ

(※)「困り感」は学研ホールディングスの登録商標です。

 

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掲載されているのは

PriPri プリプリ 2017年5月号

PriPri プリプリ 2017年5月号

62-63ページに掲載

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