幼児期のかずの指導はどこまで?(前編)
子どものかずの力は楽しいあそびを通して…
幼児期に指導するかずの力は、将来、算数や数学を学ぶときの基礎をしっかり身につけられるようにすることです。でも、算数が苦手、数学は嫌いという保育者の中には、身構えてしまったり、頭を悩ませてしまう人も……。そこで今月は、子どもにとっても保育者にとっても、無理なくかずの力を習得する方法について紹介しましょう。
すじみちを立てて考える力を育てる
かずの力を身につけるうえで、もっとも大切なことは、論理的な思考力です。幼児に論理的なんて難しい! そんなことはありません、例えば、次のようなことです。「ぼくはもう6歳だよ」「6歳の子どもは、4月には小学校に行きます」「だったら、ぼくは4月には小学校に行くんだね。やった」。これを数式で表すと、A=Bで、B=C、ならばA=Cとなります。これは、三段論法とか推移律という考え方です。このように、考える力を育てるとは、生活のなかで「なるほどそうなんだ」と分かることを増やしていくことです。
あそびの中で育つ考える力
「よく考えなさい!」と叱っても、急に注意力や集中力は育ちません。では、子どものやる気が長続きするのは、どんなときでしょうか? それは、自分が好きなあそびをしているときです。したいあそびをしているとき、子どもはどうすればうまくいくか、どうすればもっと楽しくなるかと自分から考え続けます。難しすぎず、やさしすぎず…子どもが夢中になって続けるあそびを提供しましょう。
あそびを通して“かずはおもしろい!”と感じる
かずは、抽象的な概念です。目の前に3個りんごがあったとしましょう。一つひとつのりんごを見たり触ったりすることはできますが、「3」そのものを「これ」と示すことはできません。頭の中にしか存在しません。それだけに難しいのです。 かずの学びに無理は禁物です。日常保育の中で、自然にかずが学べるような環境を整えたり、楽しくかずが学べるようなあそびを意図的に取り入れましょう。
平山許江先生(ひらやまもとえ)
保育楽者・青木幼児教育研究所所員。子育てのための退職や大学院入学をはさみながら私・国立幼稚園で断続的に20年勤務した後、大学で教鞭をとる。現在も子育ての楽しさを伝える講習会や、現役保育者の資質向上を目指した研修活動を、精力的に行う。
イラスト/山戸亮子