行動が変わる!ことばかけ
子どもが不適切な行動をしたとき、保育者はつい注意をしてしまうこともあるでしょう。でも、そのことばかけが原因で、その行動が増えてしまうこともあるのです。行動を分析してその行動の機能(働きや意味)を明らかにするABA(応用行動分析学)を応用し、子どもの行動が変わることばかけを考えます。 | |
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保育者の関わりで行動は変わる!そのひとつが、ことばかけ | |
ことばかけが、不適切な行動を増やしているかも! 子どもの不適切な行動を変えたくて注意しているのに、その行動は増えるばかり。それは、もしかすると、そのことばかけが不適切な行動を増やしているのかもしれません。注意という形であっても、「ことばかけ」という関わりが子どもにとって、「先生が自分を見てくれている」「注目されている」と「ごほうび(うれしいものが手に入った)」の働きをしているためにその行動が増えている。これをABA(応用行動分析学)では「強化」といいます。ABAを活用し、人の行動の基本原理に基づき、適切な行動を増やすことで、相対的に不適切な行動を減らす働きかけを行いましょう。働きかけには様々な方法がありますが、ここでは適切な行動を強化する関わりを取り上げます。 人は、行動の直後に「よいこと」が起きると、その行動を再び起こしたくなります。たとえば、「おもちゃを片付けた」→「ほめられた」という出来事があると、その後も「片付ける」という行動が起きやすくなります。この場合、ほめることばは、片付ける行動の頻度を高める「強化子」となります。「強化子」となるのは、必ずしもほめることばだけではありません。不適切な行動を増やすのにも、「強化子」は作用します。前述したように、注意をされるという一般的にはいやな行為であっても、行動の頻度が高まっているのであれば、その子にとっては「注意」が「強化子」として働いているといえるのです。 |
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適切な行動を増やす「強化子」を知る そこで大切なのが、不適切な行動を支えている「強化子」は何かを分析すること。そして、好ましい行動を増やすために何が「強化子」になりそうかを考えることです。では、子どもの適切な行動を増やすためにどんな対応ができるか考えてみましょう。大切なのは、子どもが今できていることを見つける、小さなことでも子どもができているところを見つけ、認めるという視点。おもちゃを片付ける場面を例に挙げると、全部をきれいに片付けなくても、ブロックをひとつ、箱に入れたならその部分を目に留めて、「ブロックをひとつ箱に入れたね」と認めます。ブロックを箱に入れたことをほめられてうれしかった子どもは、次もブロックを箱に入れるという行動をとる頻度が上がるでしょう。ABAの理論を応用し、行動の変容を促す目的は、「子どもが幸せになるため」。保育者の言うことを聞かせるために行動を管理するというよりも、その行動を学ぶことで子どもが暮らしやすくなることです。ことばかけの工夫で、適切な行動を増やし、不適切な行動を減らしていきましょう。 |
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教えてくれた人/大正大学 臨床心理学部 臨床心理学科教授 井澗知美 イラスト/ハバメグミ 取材・文/こんぺいとぷらねっと |