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発達支援の現場から

ともに育ち合う「混合教育」とは?

ともに育ち合う「混合教育」とは?

障がいのある子どもと定型発達の子どもが、ともに学校生活や園生活を送るインクルーシブ教育。インクルーシブ教育の草分けとも称される武蔵野東第二幼稚園の「混合教育」について、一般的なインクルーシブ教育との違いを確認しつつ、基礎的環境整備の実例をふまえてご紹介します。

少人数クラスで、安定した環境を用意
一般的にインクルーシブ教育というと、健常児も障がい児も同じ環境で学び、障がい児は学びに困難があれば、配慮や支援を受けられるようになっています。しかし、武蔵野東第二幼稚園の「混合教育」は、それとは異なるアプローチで、健常児と障がい児の「育ち合い」を目指した保育を行っています。

自閉症と診断された子どもは、10人前後の少人数クラスを基本として園生活を送ります。自閉症の特性に合わせた安定した環境で過ごしながら、身辺自立を含めた様々なことを、時間をかけて学び、できることを徐々に増やします。さらに、段階を経ながら、通常クラスに在籍する健常児と触れ合う交流活動を行います。

固定の交流クラスで、フレキシブルな関わりを
交流するクラスは、一年間、同じ通常クラスが設定されます。交流活動は、その子のもつ特性や発達段階に合わせ、内容や時間を配慮。昼食の時間、自由あそびの時間、音楽や体操など、活動内容によって交流時間を選択したり、朝と帰りの時間以外を交流クラスで過ごしたりします。最初は、交流クラスで落ち着いて過ごすことができなかった子が、友だちとの関わりを深めるうちに、通常クラスでも安定して過ごせるようになっていきます。

交流クラスで健常児の子どもたちと活動することは、将来の社会的な自立に向け、コミュニケーションスキルを養うことにもつながります。それは健常児にとっても同じこと。一緒に活動するなかで、自閉症児のあそび方や感じ方に、自分とは異なる部分があるという多様性を認識し、それを受け止め、認め合う力がついてきます。どうしたら一緒に心地よく過ごせるのかを考える力もつきます。健常児だけでも学べることですが、自閉症児と過ごすことで、より一層意識できるようにもなるのです。

本誌では混合教育の環境・保育体制の仕組みを実例を交えて紹介しています。

お話/河井優子先生
特別支援教育コーディネーター。担任をもたない相談役。どの子どもの特性も把握していて、保育者からも保護者からも頼りにされている。

武蔵野東第二幼稚園
創立当初から自閉症児を受け入れてきた、インクルーシブ教育の草分け的な園。健常児のクラスとは別に、自閉症児のための少人数クラスを設け、互いに交流をしながら人とのつながりあいを大切にした保育を行っている。

撮影/磯﨑威志(Focus & Graph Studio) 取材・文/仲尾匡代 写真/PIXTA

 

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PriPri プリプリ 2019年5月号

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