あそびの中で⼦どもは育つ
保育の質の向上に役⽴てるドキュメンテーションの使い⽅
ドキュメンテーションにみる質の高い保育
さて、今回本誌で取り上げたドキュメンテーションは、子どもの気づきとつぶやきがきっかけとなって、その後何日にもわたってあそびが発展していく様子を、見てわかるように記録したものです。
子どものつぶやきを保育者が受け止め、「浮くかな?沈むかな?」の実験をするようになったというプロセスを見ても、子どもたちはその中でいろいろな疑問をもち、予測し、確認し……と、試行錯誤を繰り返していることがわかります。まさに質の高い保育の実践記録です。
これを見ることで、保護者にもあそびのプロセスの重要性が伝わるのはもちろんですが、このドキュメンテーションを同じ園の他の保育者が読んだ場合も、「ああ! あのときの園庭のあそびには、こういう意味があったのか。それなら、私はこんな声をかけてみよう!」などと、あそびの輪に加わってくれるかもしれません。
また、このドキュメンテーションがあるからこそ、保育者間のアドバイスもしやすくなるでしょう。このドキュメンテーションを見て、「自分も子どものつぶやきを大切にしよう」と気づく保育者もいることでしょう。
本誌57ページ左側のもう一のドキュメンテーションは、「浮くかな? 沈むかな?」の実験をしたことから、「舟を作りたい」とひとりの子どもがつぶやき、実際に作り始めることになった様子が描かれています。
ドキュメンテーションは写真と文章で子どものあそびがリアルに記録されているので、この2枚を見ただけで、とてもわくわくしてきます。さて、実はこのあそび、このあとさらに広がりを見せます。それは、またの機会に。
本誌では保育者間で共有した実際のドキュメンテーションを紹介しています。
⽂/⽥澤⾥喜(⽟川⼤学教育学部准教授、東⼀の江幼稚園園⻑)
協⼒/陽だまりの丘保育園(東京都) イラスト/朝倉めぐみ