あそびの中で子どもは育つ
あそびの「ドキュメンテーション」を継続するには
ドキュメンテーションを継続的に発信することの意味
PriPri2019年5月号では、あそびのプロセスでの子どもの育ちや学びを保護者に伝えるために、ドキュメンテーションが有効な手段であると書きましたが、保護者の理解をさらに深めるためには、ドキュメンテーションを発信し続けることが大切です。しかし、保育現場は忙しく、継続するのは難しいことかもしれません。だからこそ、工夫をしていく必要があるでしょう。
本誌53ページに掲載した事例は、写真と手書きの文章で構成されているドキュメンテーションです。見てわかるとおり、文章量はほんのわずか。発信する頻度も毎日ではなく、保育者の心が動いたときに、さっと作って掲示するそうです。たしかに、このぐらいの分量であれば続けられそうです。
「さっと」の中にあるもの
「さっと作って」と書きましたが、このドキュメンテーションは適当に書かれているわけではありません。それどころか、3歳児のあそびの中の試行錯誤がとてもわかりやすく書かれています。
丈夫な家を作るために、ガムテープを根気よく貼ったり、どんな廃材がレンガになるかを考えたり、3歳児が工夫している様子がぱっと見てわかります。
また、絵本を積んで壁を支えることを「よく考えたね!」と認めつつ、「でも、もっといい方法は……?」と、子ども自身の考えを一段階深めるための保育者の問いかけについても書かれています。
頭の中で、保護者に伝えたいポイントが整理できていないと、簡潔なドキュメンテーションにはならないのです。
わかりやすいドキュメンテーションを書くために
この事例のようなわかりやすいドキュメンテーションを書くためには、いくつかのポイントがあります。
1 園や保育者の大切にしていることが明確であり、それを目指して保育を展開している
この事例の園は、『試行錯誤の中にこそ学びがある』ということを保育の柱にしているのでしょう。だからこそあそびを大切にしています。ゆるぎない保育の原点です。
2 子どもの姿や行動を保育者が面白いと感じる
この事例では、家が倒れないように絵本で支えようという子どもの発想を、保育者は面白がっています。さらに、そこが、あそびが広がるきっかけになるとも感じたのでしょう。だからこそ、保護者に伝えたい!と、思いのこもったドキュメンテーションを作ることができたのです。
読む人にとって、楽しくわかりやすいドキュメンテーションを作るためには、保育には何が大事なのか、あそびが面白いとはどういうことなのかなど、園内で日頃から保育者同士で話し合う習慣を持つことが大切です。
本誌では具体的なドキュメンテーションの例を写真付きで紹介しています。
文/田澤里喜(玉川大学教育学部准教授、東一の江幼稚園園長)
協力/宮前幼稚園 イラスト/朝倉めぐみ